シンベルミネ

　シンベルミーネ（忘れじ草）　

・・・ことばを・ふわりと・まとった・ひと・・・　　

　私が「指輪物語」と出会ってから、２０数年経ちました。昨年このＨＰを開いてから今日に至るまで、５０名以上もの指輪ファンに出会うことができました。世の人にこの作品が理解されていなかったあの当時、この「指輪物語」を熱烈に愛していた人たちが日本にこんなにも存在し、その人たちは今なおその情熱を持ち続け、さらにこの瞬間にも「指輪ファン」は増え続けているのだ、と胸が熱くなりました。

　「指輪物語」を話しにこちらにいらっしゃる方は、ことばを宝物のように大切にあつかっておられます。その気持ちがネット越しに伝わってきます。私も、トールキン教授の「英語への愛」や瀬田貞二さんの「日本語への愛」に触れて、「ことば」を愛する喜びを知りました。不思議なことに、「ことば」は、まだ会ったこともない書き手の雰囲気を読み手に強く印象づけます。

　この指輪を巡る出会いの中で、印象的な方がいらっしゃいました。「ことば」を羽毛のようにふわりと身にまとって、私たちの前ににこやかに現れる、不思議なことばの使い手です。私は、「ことば」を織り上げるべく、紡ぎ出し、絞り出してようやく形になります。でも彼女の「ことば」は、まるで天から彼女のもとへ自然にふわりと降ってくるかのようで、こんなにかろやかな「ことば」が存在したのだと驚かされました。

　かすかな息づかいまでもが聞こえる見事な句点の配置、クスクス笑いが聞こえそうなことばの遊び、何度も何度も、うっとりとながめました。ネット上で、自分をしなやかに表現する術を知っている美しい方だと思いました。彼女は、最もふさわしい「ことば」を見つけ出す時間を楽しみ、「ことば」をとても慈しんでいたのだと思います。

　私たちは、彼女が教えてくれたトールキン教授の世界の奥深さに心惹かれ、未知の境地に誘われていきました。トールキン世界との類似性という光に導かれてこっそりのぞき見たキリスト教のグノーシス派の魅力、教授の声を聞きながら紅茶を飲む満ち足りたゆるやかな時間、彼女と出会わなければ決して知ることのなかった喜びです。私たちが語り合った楽しい時間にとても感謝しています。
　
　また、やさしく温かい「ことば」がつくりだすその雰囲気は、そのまま彼女のやさしく穏やかな人柄を思い浮かべさせてくれました。一度もお会いしたことがないのに、そのお姿や笑顔まで思い浮かんでしまいます。ずっと昔、「指輪物語」を知った瞬間から、研究室や庭で遊ぶ私たちはきっと仲間だったのでしょう。　その古くからのファンであった彼女と、今回の映画化をきっかけに知り合うことができた奇跡に、心から感謝しています。

　彼女は今もこの世界のどこかにいらっしゃるのでしょう。きっとこれからも、このはてしない「指輪世界」を、どこまでも私たちと一緒に旅しているに違いありません。
　
　　　　　　　　

・・・・・私的メモリアルページ・・・・
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